FIND OUT
俺に愛人なるものが出来て一週間以上が過ぎていった。何が変わるわけでもないし、変える気も無い。
「ひぃ。おなかすいたー」
あーあった。変わったこと。
食生活が完全に変わってしまった。
以前は、まあ適当になるようになるや精神でやってきたが何せ奈千佳は偏食の極み。これといったもの意外箸もつけなかった。
悩んだあげくの結論は冷蔵庫にホワイトボードをはりつけてそこに食べたいものを書いておけというもの。
「柊、腹減った」
スパコーン
思わず持っていた料理雑誌で夜人の頭をはたく。いやだってそりゃ、人が苦労して料理作ろうとしているそばでゲームやりながら腹減った言うのを許すほど俺は心広くないって。
「なんだよ」
「手伝えよ」
しばらく無言の会話。……のはずなんだが。いつもならば。
「奈千佳。なんだその目は」
「へ?」
どうも最近、不思議なタイミングで奈千佳の目がこう、期待に満ちたというか、輝く。
相当不自然だ。
「……おなかすいたーひぃーひぃー」
どう考えたって何かを隠してるんだが、あーゲーム再開しやがった夜人め。にゃろうふざけんな。
「ひぃー」
「……わーったわーった」
俺がキッチンで冷蔵庫の中身を確認していると、玄関のチャイムが一度なった。そして奈千佳のパタパタという弾むような足音が過ぎていき、ドアが開く。
「柊くーん。もうお夕飯つくっちゃった?」
「いや。まだだ」
手にはタッパーをもち、ひょこんと顔を出してきたのは志乃だった。風呂上りなのか濡れた髪を奈千佳と同じコンコルドで束ねている。いつのまにそんなに仲良くなったんだろうか?
「あのねー肉じゃがとか作ったのーあとハンバーグのたね。すぐに焼けるけど」
「はんばーぐ!」
奈千佳が嬉しそうに目をキラキラさせて志乃を見る。俺は若干の苦みをくわえながらも志乃に夕飯の用意を済ませることにした。
「あ、ちょっとまって柊くん」
「ん?」
キッチンから逃げ……去ろうとした寸前で志乃が取り出したのはレポート用紙。
「明日提出なの」
おずおずと俺に伺いをたててるが、俺にしてみりゃレポートを見るくらい料理に比べたら!!!
「頼んだ」
奈千佳が何かを言い出す前に俺はキッチンから去る。リビングでは夜人が床に伸びていた。
「隊長勝てません」
どうやら勝てない敵がいるらしい。俺は基本的になんだってやるより見てたりアドバイスするほうに性があっているからこういうのは殆ど無い。
「知るか。レポート読むんだよ」
「読めばいいじゃないか」
「……枕が無い」
夜人は伸びたまま溜息をつくとあぐらをかき直してコントローラーを持ちなおした。俺は躊躇い無く足と腕の合間に無理やり枕を作り出して寝転ぶ。
「柊くん、どう?」
しばらく(2回ばかり夜人が主人公を倒したくらい)すると、おいしそうな香りとともに志乃が顔を覗き込んできた。いまさら恋人ってなんなんだろなー。
志乃は可愛い。性格もいいし、料理だって出来る。
「いいんじゃないか?これくらいで」
だが、餓鬼のころからの付き合いで今更。
実際そういうことも無い。愛人のはずの奈千佳とも。むしろ兄貴分が近いような。そんな。
「じゃあ、ごはん。できたよ?」
上を見上げると夜人はやっと敵を倒したらしく、いそいそとセーブをしていた。
「ん」
何も変わらない食卓
いつまでも続くはずの関係
壊したのは俺か
はたまたどこぞの天使か