FIND OUT



 とりあえず話を整理すると柊が愛人を拾ってきて彼女はここに住む。

「夜人。俺とりあえず志乃よぶわ」

 柊が言い出さなければオレもそうしていただろう。
 オレはこの柊との力のいらない関係が意外に心地良いものなのだと最近になって気付いた。

「志乃?」
「……オレに説明は求めないで下さいね?奈千佳さん」

 どうして柊という人間はこうも人間関係をややこしくするのがすきなのだろうと常々思う。
 
 人を自分を傷付ける事を恐れているくせに

「夜人さーん」
「つれてきてみたー」

 ものの一分足らずで柊は隣から帰ってきた。
 志乃ちゃんはいわゆるお隣さんで俺らの一つ下にあたる大学生だ。

「これが愛人さんなのー?」
「ああ。奈千佳。挨拶」
「始めまして奈千佳です。ひぃの愛人になっちゃいました」
「……ひぃ?」
「えっとー柊のことー。ひぃのほうが可愛いでしょ?」

 オレは何をすることも無く当然のように膝を枕にして雑誌を読み始めた柊の髪を無意識に梳いていた。

「ところでー志乃ちゃんってー?」
「えっとー夜人さんと柊くんの恋人です」
「……ふたまた」
「はい♪」

 もうこの手の反応にもなれたんだな。きっと。
 志乃ちゃんは確かにオレと柊の彼女の予定です。

「えっとー私達よく遊ぶんですね?それで大学とか違うからたまに二人が迎えに来てくれたりとかして。そうするとー『どっちが本命?』とか聞かれちゃうんですよ」
「へー」
「で、それを柊くんに言ったら『じゃあ二人とも恋人で』って」

 ちなみにオレはそれを事後承諾で知った。

「だからって恋人っぽいことしてないんですけどね」
「そうなの?」
「だって。いつも三人だし。それにー」
「それに?」
「この二人見てるとねえ?」
「あーわかる」
「「何がだ何が」」

 確かにオレらは志乃ちゃんと何もありませんよ?だからってなんでこっちでくくるんですか!いや、それよりも、志乃ちゃんってそういう思考回路の持ち主だったの?誰か嘘って言ってくれー!

「奈千佳。目が輝いているところ悪いが。これは日常だ」
「志乃ちゃんもそんなこと言わないで」

 一斉に弁明をしたものの、志乃ちゃんと奈千佳さんの目は輝いている。

「大丈夫だよーからかっただけ」
「そうそう、いくらなんでも自分の愛人がそんなのいやー」

 志乃ちゃんの笑顔がいつもどおりなのを見てオレは力が抜けた。

「奈千佳」
「ん?」

 柊が顔も上げずにぽつりと呟くように話に入った。

「なんか困ったら志乃に言えばいい。あんだろ?買い物とか服とか」
「そうだねー。奈千佳……さんはここに住むんでしょ?」
「ちゃんでいいよー?」

 オレには『さん』で志乃ちゃんには『ちゃん』なんだ。ちょっとショック。

「それと、そこのプレートかかってない部屋、奈千佳んだから」
「え?」
「見に行ってみよー」

 ぱたぱたと志乃ちゃんと奈千佳さんは一番玄関に近い部屋に駆け込んでいった。オレの記憶が正しければあそこにはベットと柊が昔愛用していたパソコンしかないはずだ。
 
 各部屋の大きさ的にはオレが一番広く、次に柊、そして例の部屋。
 なんでそういう割り振りかはのちのちわかるので割愛させてください。

「ひぃー!」
「あ?」
「志乃ちゃんとお買い物いってきていいー?」
「いってこい」
「柊くんお金ー」

 あ。やっぱり柊の金なんだ。
 だが、柊は一向に動く気配がない。ってことは必然的にオレが動く羽目になるわけだけど。膝枕中に立てっていうんですか?

「志乃ちゃーん。たぶんそこらへんに柊の財布あるからー」
「夜人くんこれー?」
「あ、そう奈千佳さんそれ」
「「いってきまーす」」

 なんとか財布を彼女らに渡し、慌しく玄関が閉じる音がすると柊はむくりと起き上がった。

「             」

 柊はオレの顔を見ると何かを言おうとした。
 あまりにもその目はまっすぐにオレを捕らえて不覚にも眩暈がきてしまった。

「帰ってくるまで寝る」

 そういうと、柊はまたもとの体制に戻って目を閉じると規則的に音を立てて眠りに付いてしまったようだ。

 あの二人がドアを開けるころには、すっかり夢の世界に引き込まれていた…… 




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